Promenade(北園みなみ)

Promenade(北園みなみ)

2024-02-24 2024-02-25 , featured image by Zeppelubil / Th. Haft / Torgau, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

購入

北園みなみ 「Promenade」 P.S.C.

北園みなみの 1st EP。どの曲もアレンジが重層的で、それでいて難解にはならずポップさを保っている。
ゲストミュージシャンを多数むかえて制作されており、コーラスには Lamp の永井祐介、榊原香保里の姿もみえる。ベース、ギター、鍵盤が北園本人の演奏だ。1
北園はもともとコントラバス奏者で「名古屋のジャズ・シーンでちょっと忙しくしていた時期もあった2」という。たしかにこのアルバムに収録されている曲のベースは聴きとりやすく、テクニカルなフレーズも多い。

このアルバムをよく聴いていたとき、わたしは副都心線の沿線に住んでいた。新宿三丁目駅から新宿駅までの長い地下通路を歩いている風景とこのアルバムがなんとなく結びついている。

1. ソフトポップ

不穏な響きからうつくしいストリングスに展開するイントロ(~0:35)が白眉で、アルバム全体をみごとに決定づけている。どこをとっても隙のない曲で、終始圧倒される。

この曲は北園の SoundCloud に登録されている「Dorothy (70’s AOR Pop)」がもとになっている。アルバムの「ソフトポップ」のあとにこちらを聴くとかなりゆるい。逆に、これを踏まえて「ソフトポップ」を聴くと息苦しいほど濃密に感じられる。

イントロもよければ終わりもよく、アウトな音選びのギターソロがラジオのようにフェードアウトする(4:18~)。

2. 電話越しに

なんといっても電話のプッシュ音からはじまる演出がにくい。
情報量としては「ソフトポップ」よりはおちついている。3:08~からはじまるコーラスがしっとりしていて好き。

2:49 のあたりに「にゃん」という声が入っているのはなぜなのだろうと思っていたので調べてみたところ、北園がファンであるももち(嗣永桃子)の「許してにゃん」のサンプリングらしい。北園の SoundCloud にはこんな曲も投稿されている。

3. Vitamin

しあわせな日々を歌っているようでいて、どこかノスタルジックな喪失感もただよう歌詞。収録曲中で北園の歌の魅力がもっともよく出ていると思う。

4. プラスティック民謡

曲名どおり民謡風のフレーズではじまるトリッキーな曲。収録曲中でゆいいつ土俗的な雰囲気がある。B パートでは 7/8 拍子をたくみに乗りこなしている。

5. ざくろ

他の曲と比べると、相対的にくせのない感じがした。アレンジの過程で要素が削ぎ落とされたことでこうなったのだろうか。

僕は音色的価値というのをいつも考えているんですけど、打ち込みでポーンと出した音色って、あまり価値がないように思えて。ひとつの音に音楽を宿らせる価値があると思うし、そういうものがたくさん揃ってきたら、音数は少なくてもいい。それが今回の『promenade』に収録した“ざくろ”ですね3

SoundCloud の宅録版から評判の曲で、そちらはアウトロにピアノのおまけがついていた。

「僕らの行き先は月に似てる」という歌詞が記憶に残った。


# music # pops