足摺り水族館
2024-02-21 2024-02-23 , featured image by r18 INO (PACHIMO), CC BY 3.0, via Wikimedia Commonspanpanya 「足摺り水族館」 1 月と 7 月
わたしがはじめて手にとった panpanya 作品だった。新宿の紀伊国屋書店で、凝った装丁が目にとまったのだ。 ボール紙のような紙に印刷された表紙がギザギザとしたビニールで覆われている。個人的にこういうビニールカバーは好きだ。古本屋の中公新書でよく見るイメージがある。
読んでみて、作品そのものはもちろん、挿入される文章のうまさが印象に残った。
気取りや衒いがなくて、ものごとをフラットにとらえている。それでいて独自の着眼点がある。
衒いのなさは漫画作品にも共通しているように思うが、そこには更にマジックリアリズム的な感覚が加わる。
完全商店街
母親から頼まれたおつかいの品が買えずに困っている主人公は、
無いものは無い
この世に存在するありとあらゆるものが並び手に入る商店街1
である「完全商店街」のうわさを聞きつける。
そこには、分類できないもの、作中のことばを借りれば
人間のかぎりない知のちょっと先にある物ども2
も売っているのがすてきだ。
冥途
フランスにいる主人公が、頭上を通過する巨大な飛行船を追いかけるうちにでたらめな「死者の町」へと迷いこむ。
死者の町は異国情緒をただよわせながらも、同時にひどくなつかしい。空には飛行船が染みのようにこびりついている。
郷愁、安心感、たちまちすべてが理解できること。そういった要素から逆説的に死の匂いがただよう一作になっている。
君の魚
主人公とレオナルドが水族館に展示する魚類をもとめて多摩川をさかのぼる。
収録作にはめずらしく、感情的な離別がある。それに続く小河内ダムのシーンは、大ゴマに大胆に残した白い空間が映えている。そこまでの細かく描きこまれた背景から急にこのページに来ると、あたりが静かになった感覚がする。
# comic # panpanya